甘い××の、その後に。
〜Love You Baby〜

 

1.新生活スタート!

*おかーさんたち、つぶれる




「では、眞緒ちゃん、陽斗、おめでとう!」


「おめでとう!」


「「かんぱーい!!」」



こうやってみんなで集まるなんて、何年ぶりだろう。



「眞緒もハルくんも大きくなったわよねー」


「ねぇー?」



意味深なニュアンスを含みつつ、おかーさんたちが目配せする。


ハル兄パパも、若干ニヤニヤしているような……。


馴染みある家族間での交際って、やっぱり照れくさい……。



「ねね、ハル兄。あたし、お腹へった!」



ハル兄クッキングは途中だったらしく、テーブルの上に乗っているのは、まだ飲み物類だけ。


というわけで、ハル兄に注文をつけて、この場を離れようと試みたわけだけど。



「あたしも手伝うから、準備しよう?」


「いいよ。お前は座ってろ」


「いや……手伝う! っていうか、手伝わせてください!」



ここに一人で残されても、、、、困る。


ハル兄の後を追いかけて、キッチンに立ったのはいいけど。



「……丸見えだったんだっけ」



対面型のキッチンからは、リビングにいる3人の顔が普通に見えて。


仲良くていいわね〜みたいな表情が、あたしとハル兄に向けられている。


……逃げたつもりが意味なし。



「なんか、恥ずかしいね……」


「まあな」



なんて、苦笑し合いながら料理開始。


やっぱり包丁は持たせてもらえないけど、一生懸命助手をするあたし。



「眞緒、パクチーって食えるか?」


「うん。ピーマン以外、大丈夫」


「ピーマンの肉詰めにすればよかったな」


「またイジワル言う」



あたしの言葉に、くすくす笑うハル兄。



「もう大学生なんだから、ピーマンくらい食えるようになれって」


「食べれるもん。……無理すれば」


「ま、今日は特別にピーマンは出さないでやる」



そう言ったハル兄が取り出したのは、ライスペーパー。


どうやら、生春巻きを作ってくれるらしい。



「わーい! あたし、生春巻き好きー」


「オリジナルレシピだけどな」


「生ハル兄の作る、生春巻きだね。ぶっ」


「おもしろくねーぞ」



浮かれるあたしに呆れながらも、ハル兄クッキングは、流れるように進んでいく。



「眞緒、それとこれ、向こうに運んでおいて」


「はーい♪」


「落とすなよ」


「はーい♪」



あ〜〜、楽しいなー。ウレシイなー。


好きな人がここにいてくれてるってだけで、すごくウレシイ。



「あとは? 何する?」


「向こうで座ってろ。パスタを仕上げれば終了だし」


「やだよ」


「なんで」


「だって。……少しでも長く、ハル兄のそばにいたいんだもん」



会えたときくらい……近くにいさせてよ。


このパーティが終われば、またバイバイしなきゃならないんだから。



「そういう寂しい顔すんなって」



うつむいたあたしの顔をのぞき込んだハル兄が、小さく笑う。



「……だってさ、やっぱり寂しいよ。近くにハル兄がいないって」



両想いになれた瞬間は、先のことなんて考えていなかったけど。


新生活と同時に遠距離恋愛がスタートすると、会えない時間が、どんどん切なくなってきて。



「あたし……浪人すればよかったな。そしたらさ、上京して、ハル兄の教える予備校に行ってたのに」


「あのなぁ……。せっかく合格できたのに、そういうこと言うなよ。浪人して、がんばってるヤツらに失礼だろ?」



たしなめられて、しゅん……と顔を伏せる。



「そーだよね……」



……そうなんだけどさ。



「あ〜あ……」



ため息を漏らしたあたしの右手に、ハル兄の手のひらが重なった。



「こっちに戻って来れる時間、なるべく作るようにするから」


「……うん」


「それに今夜は、たぶん、朝まで一緒にいれるぞ?」


「?」


「だからそう落ち込むな。な?」


「うん? うん」



首をかしげるあたしの顔に、ハル兄はもう一度ほほ笑んだ。


にぎった手に、きゅっとチカラを込めて。



*



「それでは。改めて、かんぱーい!!」



料理が出揃ったところで、再びグラスを合わせた。



「すごい! 眞緒の言う通り、ハルくんって、料理上手なのね〜」


「しつこいようだけど、あたしには1回も作ってくれたことがないのにねー。
眞緒ちゃんのためなら作れちゃうのねー」



おかーさんたちは、ますます盛り上がる。



「ささ、パパも飲んで。そして食べて」


「はいはい」



次々にお酒をつがれて、ハル兄パパの顔も赤くなってきた。



「ハルくん、今度、おばさんにも料理教えてくれない?」


「いや、おばさんの料理の方が美味しいですから」



なんて答えるハル兄のグラスにも、なみなみとビールが注がれる。



「ホントに美味しいなぁ……ハル兄の料理」



あたしはあたしで、もくもくとプロ級の味をほおばった。



「あのね、杏子、※○△×……」


「うそー! それってさ……▽×※○」



だいぶ酔ってきたおかーさんたちの語尾は、おかしなことになっている。


っていうか、こんだけ酔っている姿を見るのは初めてなんですけど。



「おかーさん、めちゃくちゃテンションあがってるけど大丈夫かな……」



ぽつりと漏らしたあたしに、ハル兄が笑う。



「大丈夫じゃないだろうな」


「え?」


「ま、たまにはいいだろ。楽しそうだし」


「うん。そだね」



おかーさんにも、ストレス発散させてあげないと。


いつもいつも、あたしのために頑張ってくれてるんだもんね。



――それから数時間後。



「なんかあたし、眠くなってきちゃった〜」


「あたしも〜〜」


「じゃ、おやすみ〜〜」


「おやすみ〜」


「「ZZZZZZ……」」



すっかりベロベロのおかーさんたちがパタンと倒れた。



「……」



その姿を、あ然と見るあたし。



「やれやれ」



ハル兄パパも、ふたりを見下ろして苦笑いをしている。



「父さんも限界だなー。陽斗、オレも寝ていいか?」


「ああ、いいよ。ここは片づけておくから」


「悪いな。じゃ、眞緒ちゃん、おやすみ」


「あ、はい。お、おやすみなさい」



2階の寝室に引き上げていくハル兄パパのお尻を見上げる。


そんなあたしの頭に、ハル兄の手のひらが乗っかった。



「眞緒も眠いか?」


「ううん、あたしは大丈夫」


「なら良かった。片づけ手伝ってくれるか? さすがにこれじゃな」



テーブルの上には、空き缶やらこぼした飲み物やら。


床には、酔い潰れたおかーさん二人もいるし。



「確かにひどいね……」



でも、満足そうな寝顔を見ていると、こっちも幸せになってくる。



「あたし、洗いものは得意だよ。料理は全然だけど」


「よし。じゃ、やるか」


「やろう!」


「おー」



お祝いされるはずの二人が後片付けっていう。


だけど、ハル兄と一緒に何かを出来ていることが、単純にうれしかった。



◆◇◆◇

back top next

完結版はこちら

気に入ってもらえたら
NNRに投票

inserted by FC2 system